- 椎間板ヘルニア
- 頚椎症(頚椎症性神経根症・脊髄症)
- 腰部脊柱管狭窄症(腰椎変性すべり症)
- 腰椎分離症(腰椎分離すべり症)
- 後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症
- 骨粗しょう症・脊椎圧迫骨折・破裂骨折
- 特発性脊柱側弯症
- 変性脊柱後側弯症
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは
椎間板は椎体と椎体の間にある、体重や動きを支えるクッション材です。
若年のうちは弾力がありますが、年齢とともに徐々に水分が減少し、弾力がなくなり傷んできます。何らかの負荷によって、椎間板が飛び出すことを椎間板ヘルニアと言います。ヘルニアとは、飛び出すという意味です。
症状
脊柱管という神経の通り道は椎間板と接しており、傷んだ椎間板が後方に飛び出すことで神経を圧迫します。神経が圧迫を受けると手足の痛み、シビレ、脱力などがでます。
※画像の赤丸(○)部分が飛び出た椎間板
腰椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニア
治療方法
ヘルニアは時間がたつと自然に吸収されて症状がよくなることもあるため、まず鎮痛など薬の内服、ブロック注射、 リハビリなどの保存療法を行います。しかし、神経の圧迫が強いと、手足の麻痺や、おしっこが出なくなることもあり、このような場合は手術でヘルニアを取り除く必要があります。
日常生活が困難なほどの疼痛や、3か月以上たっても症状がよくならない場合にも手術を行います。早く仕事に復帰したいとの理由で手術を希望される患者さんもいます。最近では椎間板に薬剤を注射(※1)する方法もあります。
腰椎椎間板内酵素注入療法※1
ヘルニコアという薬剤を注射で患部に注入することで椎間板内の圧を軽減し、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫を低下させる治療法です。手術をせずとも症状の改善が期待できる方法です。
一泊程度の入院で、体の負担を抑えて、症状を改善したい方などにお勧めです。
ただしすべての椎間板ヘルニアが適応ではありませんので、ご希望の方は一度医師にご相談ください。
※当院は2020年4月1日より、日本脊椎脊髄病学会 椎間板酵素注入療法実施可能施設として認定を受けております。
手術について
頸椎椎間板ヘルニアの手術法はヘルニアの位置によって異なります。大きくわけて体の前方から行う方法と後方から行う方法があります。
腰椎ヘルニアの手術法については以下をご覧ください。
頚椎症(頚椎症性神経根症・脊髄症)
頚椎症とは
頚椎(首の骨)、椎間板、靭帯、関節の変形や変性によって生じる症状のことを総称して頚椎症といいます。
症状
頚部から肩、肩甲骨、上肢にかけて痛みや、手足のシビレ、指などの動かしづらさ、つまずき易いなどの症状がでることがあります。症状が悪化すると、筋力低下、歩行困難、さらに排尿、排便困難等が出てきます。
※左は正常、右は変形した頚椎(頚椎を横から見たレントゲン写真)
症状
※左は正常、右は頚椎が変形して脊髄が圧迫されている(頚椎を横から見たMRI)
症状
治療方法
症状が軽度の場合は内服(鎮痛剤)、リハビリテーション、ブロック注射などの治療を行います。
しかし、脊髄神経は、一度損傷を受けると回復しづらいため、脊髄神経の圧迫の程度によっては、症状の進行を予防するためにも早めに手術をすることが推奨されます。
手術について
脊柱管狭窄症・腰椎変性すべり症
脊柱管狭窄症とは
脊椎に神経の通り道があり、これを脊柱管といいます。
脊柱管は骨、椎間板、靭帯に囲まれた空間であり、この囲んでいる骨や椎間板、靭帯などが年齢とともに変性してくることで、神経の通り道が狭くなります。このような状態を脊柱管狭窄症と呼びます。
腰椎変性すべり症とは
脊椎や椎間板、靭帯など加齢性の変性を起こし、安定性がなくなり、グラグラになり骨がずれることをすべり症といいます。
症状
腰椎脊柱管の中にある神経(馬尾)は足の運動や感覚、排尿、排便を担当する神経が通っていますので、神経が圧迫を受けると、足の痛み、シビレ、筋力低下、排尿障害がおこります。
特に、歩行を開始すると次第に足が重くなって歩けなくなり、休むことで症状が改善し、再び歩行できることを間歇性跛行と呼び、脊柱管狭窄症にみられる症状です。
※脊髄造影後に腰椎を側面から見たレントゲン
造影され白く写っているのが脊柱管
左は脊柱管がよく写っている(正常)が、右はとぎれとぎれになっている(脊柱管狭窄症)
レントゲン写真
※左が正常、右は脊柱管狭窄症(MRI 腰椎を輪切りにした画像)
脊柱管(赤丸の中の白い部分)が右では狭くなっている
MRI画像
治療方法
症状が軽い場合には保存療法が第一選択になります。 鎮痛剤や神経周囲の血流を増やす内服薬の使用、リハビリ、ブロック注射が一般的です。症状が重篤な場合(痛みが強い、歩けない、足が動かない)は、神経の圧迫を手術で取り除く必要があります。脊椎の変形(椎間板や靭帯、関節の変形)や不安定性が強い場合には神経の圧迫を取るだけでは症状がよくならないことも多く、インプラント(金属)を使用し、脊椎を固定もしくは制動をする手術を行うこともあります。
手術について
腰椎分離症
腰椎分離症とは
腰椎の後方支持要素である椎弓が分離(骨折)している状態を分離症といいます。
10才代前半から思春期にかけてスポーツを行っていた人に好発するといわれています。
第5腰椎に発生することがほとんどで、原因は繰り返いの物理的なストレスによる疲労骨折といわれています。
骨折の初期であれば骨癒合し治ることもありますが、骨癒合せずに偽関節となることが多くあります。
症状
分離があると、脊椎の安定性が悪くなり、慢性的な腰痛の原因になります。
脊椎が不安定なため、椎間板が変性をおこして脊椎が前方にずれることがあります。これを分離すべり症といいます。
腰椎分離症について
※左は分離部分のCT 右はレントゲン
症状
治療方法
初期の分離で骨癒合が期待できる場合は、運動の中止やコルセットの装着などを行います。骨癒合には時間がかかりますので、スポーツ活動性が高い方は医師と相談の上でスポーツと治療を両立できるように治療をおこなっています。
骨癒合が得られていない(偽関節)分離症で腰痛が軽い場合は内服、リハビリテーションを行います。
腰痛が強い場合や、神経が圧迫されて下肢が痛くなる場合には脊椎を固定する手術治療を行うこともあります。
手術について
後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症
後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症とは
後縦靭帯とは、椎体の後壁を上下に連結する靭帯のことです。この靭帯のすぐ後ろに脊髄神経があります。 黄色靭帯とは脊柱管の後方にある靭帯で神経のすぐ後ろにあります。
後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症とは、この靭帯が骨に変化し、次第に大きくなってくる病気です。
その結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄が圧迫されて神経障害を引き起こす事があります。
原因
中年以降に発症することが多く、男女比では2:1と男性に多いことが分かっています。
糖尿病、肥満、遺伝的素因、性ホルモンの異常、骨の代謝異常、全身的な骨化傾向、加齢性変化などいろいろな要因が考えられていますが、原因はまだわかっておらず難病指定にされています。
症状
頚椎にこの病気が起こると、頚椎症性脊髄症の症状(手足の動かしづらさ、しびれ、つまづき易い)がでてきます。
胸椎にこの病気が起こると下半身に症状がでます。初発症状として下肢の脱力やしびれがでますが、症状がひどくなると、歩行ができなくなります。
後縦靭帯骨化症
※赤丸が後縦靭帯の骨化
(上段は頸椎を横から見たレントゲンとMRI、下段は頸椎CT)
脊髄が強く圧迫を受けている。
後縦靭帯骨化症
※赤丸が骨化した黄色靭帯
黄色靭帯骨化症
治療方法
圧迫が軽度で、症状が軽い場合や進行しない場合は保存療法(内服、リハビリ等)を行います。
圧迫が高度で、症状が強い場合や進行している場合には手術を行います。 圧迫が高度の場合には、症状がなくとも転倒により脊髄が障害を受けて強い麻痺が出現する可能性が高いために注意が必要です。
手術について
骨粗しょう症、脊椎圧迫骨折、破裂骨折
症状
椎体は、海綿骨というスポンジのような骨の周囲に硬い皮質骨がおおった構造をしています。
このスポンジのような骨がスカスカになりもろくなった状態を骨粗しょう症とよびます。
加齢、ステロイド剤の内服、閉経、生活習慣などにより骨がもろくなり、軽く尻餅をついた程度でも骨折を起こすことがあります。
診断はレントゲンやCT・MRI検査で骨折の判断をします。
椎体の後壁が骨折していないものを圧迫骨折、後壁まで骨折を及んでいると破裂骨折と言います。 初期はレントゲンで骨折が分からない軽微な骨折も多く、痛みが続く場合には再度レントゲンを撮影したり、MRIやCTで確認する必要があります
腰椎断面図
※左は脊椎を横から見たレントゲン。右はMRI。
圧迫骨折を起こして脊椎が変形している。MRIをみると脊髄が圧迫されている。
症状
治療方法
骨粗しょう症は主に骨密度を計測することで診断をします。またレントゲンで圧迫骨折が起こっていないかを確認します。骨密度が正常でも軽微な外傷で骨折を認めた場合には骨粗しょう症の治療が必要です。
治療は、適切な運動と食事が大切で、さらに内服薬や注射薬で加療を行います。年齢や骨密度、血液検査などの結果から、個々に適切な治療を選択しています。
骨粗しょう症による圧迫骨折に対して程度が軽い場合はコルセットを作り、骨が固まるのを待ちます。骨が固まらないために痛みが持続する場合、小さな切開で骨セメントを注入する手術を第一に考えます。圧迫骨折が原因となって周囲がグラグラしている場合には人工の骨を入れて金属で固定する手術を行うこともあります。 骨折によって椎体の変形が大きく、神経を圧迫しているような場合は、おしっこが出にくくなったり、麻痺が生じることがあり手術が急ぐ必要があります。ひどくなる前に早めに病院を受診することが大切です。
手術について
側弯症
側弯症とは
小児期、思春期に、成長とともに脊椎が弯曲し、姿勢異常が生じる病気です。 生まれつき脊椎の奇形がある先天性側弯症と、他の疾患が原因で発症する症候性側弯症、特に原因は不明で小学生の女児に好発する特発性側弯症に分かれます。
側弯症の早期発見
現在日本では、学校の健康診断で脊椎の弯曲をチェックする項目があります。ご自宅でも〝肩、肩甲骨、ウエストラインの高さ〟に左右差が見つかれば、受診をお勧めします。
側弯症の進行
特発性側弯症は、体の成長とともに進行する傾向があるので、早期に発見し治療を開始することが重要です。側弯症が高度になると、大人になった後も弯曲が進行するケースがあるので注意が必要です。
治療方法
- 軽症:定期的なレントゲンでの経過観察をします
- 中等症:進行防止のため、装具治療を行います。
- 重症:手術で脊柱の弯曲を矯正し、インプラントで固定を行います。
当院では、脊椎にインプラントを使用する際、〝術中CTナビゲーションシステム〟を導入しており、より安全に手術を行うことができるように努めています。
※手術前後で脊椎の弯曲が改善している。
治療例
※非常に骨の細い部分にナビゲーションを使用してインプラントを設置している
治療例
脊柱変性後側弯症
変性後側弯症とは
加齢による脊椎の変性、脊椎の圧迫骨折、背筋力の低下などが原因となり、脊柱が前方や側方に変形し、姿勢が維持できなくなる病態です。
症状
- 腰痛:立位歩行を長時間していると、腰痛のため立っていられなくなります。
- 神経痛:脊柱の変形に伴い神経が圧迫され、下肢に痛みやしびれがでます。
- 姿勢維持困難:杖やシルバーカーなどの支えがないと、立位姿勢が取れなくなります。
- 食事摂取困難:脊柱の弯曲で腹部臓器が圧迫されると食事がうまく取れなくなります。
思い当たる症状があるときにはご相談ください。
治療方法
軽症の場合リハビリで背筋力のトレーニング、姿勢指導を行います。
日常生活に支障が出るような症状が続く場合には手術治療を考えます。
手術について
脊柱の弯曲を、生理的な形に矯正し、インプラントで固定を行います。
近年、手術治療の方法と成績は大きく進歩しています。 比較的侵襲の大きな手術ですが、背骨がまっすぐになり杖もなく歩けるようになった患者さんは非常に喜ばれています。
※手術前後で姿勢が改善している
手術例